信仰の決断の結果
「また失敗したのか!あのような者など、もう生かしておいてはならぬものを!
今回もとり逃すとは~‼」
(さぁ、ゆこう)
見ると、2人の天使がいて、静かに私の両腕を支えた。
暗闇の地、空も暗い。
ただサタンのさわぐ声が、奇声がひびいてる。
邪悪な霊よ。
あぁ、もう少しで地の深みへ連れて行かれそうだった――
わが主よ、あなたを叫び求めた時、あなたは、この小さい者の叫びをきいて、救い出してくださいました。
イエス様の差し出された手に、私の手をのせた。
主は、私の手をひいて道を歩き始めた。
真っすぐな道―、味気ない道―。
分かれ道にきた。
「主よ、どうされますか?」
1人の男が、私たちの後ろから走って来た。
マラソンランナーのような姿の彼は、分かれ道でそのまま、かけ足をした。
「どちらへ行こうか?どっちにゴールがあるのか?」
彼は、私たちを見た。
「あなたたちは、どこへ行こうとしてるの?ゴールはどっちか知ってるかい?」
イエスさまは、1つの道を指さした。
すると、男は帽子をとって「ありがとう!」と言って、そのまま走っていった。
(さぁ、娘よ、行こう)
それ程の道も行かないうちに、さっきの男が戻ってきた。
「オイ!橋が壊れて、川を渡れないじゃないか。
川は溢れるほど流れているから、泳ぐことも出来ない。一体、どうしてくれるんだ!」
私たちは川まで歩いていきました。
大きな川、暗い色の水、荒れた流れは、人を飲み込んでしまいそうなほど――。
「主よ、ここを渡るのですか?」私がお聞きすると
(違うよ、これは、まやかしだ。先へ進めないようにサタンが見せているもの。
この道を通る必要はない。)
空を見ると、あれ?ヘリコプターだわ⁉ 私たちを連れて行ってくれるのね⁉
川は激しく、渦を巻くほど、強く強く流れています。
こんな川、自力で渡れるはずないわ―私たちは無事に、向こう側へ移されました。
男はまた帽子をとって、お礼を言い、走っていきました。
私たちが森へさしかかると、再び男が、全速力で戻ってきました。
彼を追いかけて来たのは、大きな黒い獣です。
熊のようではなく、もっときばの長い、太い、獅子のようなもの。
「助けてくれ~~‼」
彼は必死で走って来て、イエスさまの後ろに隠れました。
(この男に何の用か?)イエスさまが尋ねると、
――黒い獣は、黒い霧に包まれています――
「渡せ!おまえたちには、何の関係もない男だろう。
われらの獲物として定められてある男だ。ここに置いていき、おまえたちは先へ進むがよい。」
男を見ると――彼は目を見開いて、涙を浮かべています。
イエスさまは振り返り、
(助かりたいか?)と聞きました。
「もちろん‼もちろんです‼私を置いて行かないでください。
どうか、どうか、私をあわれんでください!」
(わが子よ)
主は、私に語られました。
それで、私は主が語られたことを彼に語り、
「…このようにしていくなら、主はあなたの主になってくださり、あなたは、もはや
1人ではなく、主が助け。
道を共に進んでくださり、安全に守ってくださいます。
――どうされますか?
主に従う時、あなたは今までのように自分のやり方、スピード、意思のままには進めなくなります。
でも、それが一番、あなたが敵から守られ、困難からも守れ、平安に道を進める 唯一の方法です。」
彼が考えていると、黒い獣は待ちきれず、吠えたけり始めました。
すると、私たちのまわりをオオカミが取り囲み、うなりながら近づいてきます!
「助けてくれ!助けてくれ!何でもするから!早く!早く!この状況から、助け出してくれ‼」
イエスさまは、黙って彼を見つめていましたが、獣に向き直り、
(置いていかない。今は、彼を連れて行く。)と言われ、前に進んでいかれました。
私も男もイエスさまの後ろに従いました。
黒い霧はたちこめ、イエスさまはおくすることなく、獣に向かって真っすぐに進んで行かれます。
「ちくしょ~~っ!!!」獣は、地をかき裂き。
大きな声で吠え、逃げ去っていきました。
あんなにたくさんいたオオカミもスーーッと、まるで黒い霧のように姿を消しました。
――残された、私たち。
男は、力が全身から抜けて、くずれるように座り込みました。
「こんな事って、あるのか?あれは一体何だったんだ。
あんな獣、見たこともない!なぜ、あなたたちはこわがらないのか⁉」
私は、この方が、神の子イエスさまであることを告げました。
イエスさまは彼に語り、彼は初めて、福音にふれたのです。
「キリスト教は知っていたよ。
しかし、オレとは何の関係もないって思っていた。」
彼はイエスさまを、まじまじと見ました。
そして、ひざまずいて、イエスさまに深々と礼をしました。
「オレを助けてくださって、ありがとうございます。
でなければ、とっくにあいつらに喰われていました。
サタンの存在があるとは、今まで本気にもしていませんでした。
神の存在も――。
あなたは、オレの命の恩人です。」
彼は信じるという言葉は、使いませんでした。
道を行くと、誘惑が待ちかまえていました。
「ゴールはこの先」という看板が立ててあり、道は3つに分かれていました。
ゴールと書かれている方向からは、人々のざわめきと拍手、歓声、音楽が聞こえて きます。
でも道の先は、見通せません。
ここに来ると、彼はすぐに反応しました。
「あちらの道だ!そうに違いない!さぁ、ゴールに向かって突き進もう!」
でも、イエスさまを見ると、悲しそうな顔をなさいました。
「イエスさま、違うんですね。
この道はゴールではないんでしょう?」私がお聞きすると、
イエス様は彼に、こう語りかけました。
(あなたが行こうとしている道、それは勝利の道ではないが、あなたの心はもう 決まっている。
わが子よ、聞きなさい、あなたは勝利者を夢見て、ここまで走って来た。
あなたが願うのは、この世での勝利者としての成功と栄光、冠だ。
わが子よ、わたしがわが命を捨ててまで、あなたを愛した福音をきいても、あなたの心には触れもしなかったのか?)
彼は何も言えず、ただ「命を助けてくれて、ありがとう」と言って、深々とおじぎをし、行ってしまいました。
自分の思う道を、まようことなく、振り返ることもなくて、私は涙が出てきました。
イエスさまは悲しげに、ただとても悲しげに、彼の後ろ姿を見ています。
彼の姿が見えなくなってしまうまで、私たちはずっと、立ちつくしていました。
イエスさまは私の手を握り(さぁ、この道を行こう)と他の道を示され、歩き出されました。
私たちの行く道には、いつも選択があり、道は分かれ、どこかへとつながっていきます。
ただ、そのたびに信仰の決断が出来たら、きっと私たちは永遠に輝く朽ちない冠をいただけるでしょう。
行く道は、どこかへつながっている――。
しかし、いつもその先が見通せなくて、結果は後で、1人1人が刈り取るのです。
イエスさまと一緒に歩く道は、いつも助けがあり、守りがあり、よい結果を生み出します。
いのちと平安が目の前に置かれているのなら、その道を選ぶのが正しい歩みです。
【申命記30:19】
私は、きょう、あなたがたに対して天と地とを証人に立てる。私は、いのちと死、祝福とのろいをあなたの前に置く。あなたはいのちを選びなさい。